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17(火) 20:00-公演を見て、台本を買ったので、実際の朗読劇を思い出しながら台本を読み内容の考察します。たぶんこんなに深く世界観突っ込んで書かれてないと思うけど……。
※劇感想ではありません。
- 最初、落ちる鞄を「これだけは」と引き寄せたカズ。獣医師でこれから向かう先で治療を行うつもりでいるから、その為にこの鞄が無ければならなかった。この鞄を抱き寄せる必死さがそのままカズの『とりあえず生きられるなら治療に向かわなければ』という意識である。この先もキーになる『利他的な善性』の表出。
- 恩パワーで窮地を脱しようとするもカズの恩パワーが足りず嘆くシーン。作中も明かされるが、カズが強い善性(利他主義)を持つ人物である以上、カズの過去の善行不足というより(ハヤトが『これほどの事故』と言う通り)そもそもが助かる可能性の低すぎる事案なのである。
- カズの記憶回想シーンで『脳腫瘍があるため幻覚が見える』説明がある。走馬灯シーンが終わってからカズが『腫瘍が悪化していたことに気づいた』と言うように、走馬灯シーン全てがカズの幻覚だったのだ――とまとめるための回想だが、それにしては『不自然に完治した脳腫瘍』『恩パワーの文言のある絵馬』の理屈がつかない。後述するが、恐らく脳腫瘍の下りは幻覚の可能性を残すための描写であって、実際は幻覚ではなかったのだろう。
- アカリは走馬灯(案内人)の一族であり、『絵馬に書かれた願い事を叶えるため、願い事の想いを運ぶ』役割もあるという。実際も神は馬に乗って人間界に降りてくると言われ、神の乗り物として”神馬”と呼ばれる。ただ、神様の書いた絵馬の内容の想いを運ぶと言いつつ、この後神様とカズは離れ、カズの知らない内に神様の想い人には恋人ができる。ということは”カズを含めた神様のアプローチ”は成立していない。ではなぜカズは神馬に乗れたか。それはアカリの役割が『願い事の想いを届ける』だけで『願い事が叶う』ことは保証しないからだ。そして神様もそれを分かっていて、『想いを届ける』という過程のために力を使ったのだろう。「神として全うしようと思っただけ」が本音側だったとは…。
- 見送るハヤトの「それと…何でもない」の言葉。死神であるハヤトはカズの脳腫瘍を知らなかったが、走馬灯時間で10分後に死ぬことは分かっていた。つまり死神は、原則確定した死について、あるいは実際訪れた死についてのみ知っている。そう、脳腫瘍は確定した死ではなかった。病気である以上進行具合や死に至る時間は確定しないのは当然だ。ゆえに、そのハヤトが別れの際に「それと…」と言おうとしたこと、恐らく1つは感謝だろう。アカリへ想いを伝える覚悟を持てたこと。カズの「心まで運命に従っちゃそれはもう死んだのと同じなんだ」という言葉に心を動かされた1人の男の、せめてもの誠意だったのかもしれない。そしてもう1つ、『脳腫瘍を治癒できる』こと。これは後述する。
- 事故も車も脳腫瘍も消えて何もかも無かったことのよう。これも全て幻覚か? と疑うカズ。前述のように、走馬灯から幻覚を疑わせる描写だが、恐らく全て事実である。幻覚であるならばカズが”車で帰宅していない”のはおかしい。カズは神馬に乗り牧場に着いたからこそ、事故が起きたからこそ、牧場へ車で乗り付けられなかったのだ。車が何事もなく家に戻っていたのも脳腫瘍が完治していたのも、全て『恩パワー』によるものだろう。なぜなら走馬灯の中でカズが助かったのは紛れもなく『神様が神馬を用いてカズを運んだ』からであり、カズが持っていた恩パワーは使われていない。ならば、ひどい事故から助かるためにギリギリ足りないほどかき集められた恩パワーは何に使われたのか。それは事故形跡の抹消、家に元通りの車、そして脳腫瘍の治癒だろう。死に至る最中は無理でも、死の3ヶ月前なら、まだ。そして、間に合った。
- カズについてくる鳩。この神様がこの鳩に憑依しているのは、想い人に恋人ができて飼い猫に憑依する必要がなくなったから。もっと言えば「ここでお世話になって成就した」ということは、神様自身が絵馬に書かれた想い人の願いを叶えた。言い寄ってくる恋路を邪魔していた神様が、想い人の願った恋路を祝福してみせたのだ。もう神様は想い人に執着しなくなった。飼われる猫でなく、羽ばたく鳩として。それでも未練を追い文句をつけるようにカズに糞を落としたのが、この神様の持つ人間味に思える。
- そういえば最後の絵馬に『恩パワーで健康になりますように』と書いた人物が誰かは明言されない。恩パワーという言葉を知る人物が書き、想いを運ぶ役割を持つアカリの声で読み上げられるのみである。ただ、恩パワーを何かの形に利用する能力を持つ人物は作中では1人しか出てこない。だからこそハヤトは「それと…何でもない」と言い淀んだのかもしれない。たとえそれが共同の願いであっても、あの時ハヤトにとってカズはライバル(?)であったから。