大部さんの作演出は絶対行こうと決めてる人間の初見感想。
観劇直後の覚えてるものだけ。
真っ赤なドレス。途中までは結婚式に赤いドレスなんてインパクトが強いなあ……と何の象徴か分からずにいたけど、先生の『赤いドレス』と亜珠沙への言葉の投げかけ方で分かった。あれは亜珠沙が自身に向けられていると思った言葉だ。
ひまりに向き合おうとする時に周囲から受けるであろう誹り、自身に巣食う『認められない』ことへの社会不適合者という自罰。
学生時代、真剣に打ち込んでいるからこそそうでない(ように見える)人たちが不快で、仲間内で盛り上がるばかりで努力が見えない彼らへ自分はもっと真面目にやりたいのに、と悩んだ経験、あるよ。なんなら舞台見ながら「真面目にやれよ」と思ってしまった。真剣にやってる自分が正しくて、誰に認められなくたって孤立したって自分のことをやるんだ、と思っていた頃。覚えがあるよ。
ひまりはそうして一匹狼になる亜珠沙のことを認めて、その演劇への誇りをリスペクトして心の中にずっと残していた。それをりんちゃんを通じて亜珠沙は知るわけだけど、ひまりもりんちゃんもこの『亜珠沙から見た間接的な和解』を知らない。これは亜珠沙の問題。
売れることを求めなかった亜珠沙は、自分より6年遅く芝居を始めて自分を抜いて売れたひまりを間違いなく妬んでいて、そのままならなさを受け止められるほど成熟していなくて(まあ受け止めるのは誰だっていつだって難しい)、ここまで引きずってしまった。人生を変えたいと結婚まで辿り着きそうになったところで破棄されて、また認められなくなってしまう。
亜珠沙から見てひまりは、もう『二度と』会うことなどできない相手だった。傷つけられたし傷つけた、言葉を交わし理解しあう機会すら与えなかった。だからひまりも同じだと思っていた。
ひまりはずっと、最初からずっと亜珠沙に会いたかったんだと思う。亜珠沙が拒絶していただけで(しているとひまりも思って)。亜珠沙を呼ぶ方法が分からなくて遠回りになってしまったけど。
『本当は人生に意味なんて無くて、意味が無いとどこかで分かっているからこそ意味を見出したくなる。生きるために。』妹ちゃんの言葉は、かつて『全てに意味がある』とひまりに語った亜珠沙への反駁。
意味が無ければ生きてはいけないの? 意味が無い行動はしてはいけないの? 今こうしている時間は何の意味があるの?
全ては後付けでしかない。振り返った時、『あれってこういう意味だったんだ』と意味をつけて自分が意味ある存在なのだと思いたいだけ。妹ちゃんのこの思想はもしかしたら、婚約破棄をされて自分に意味を見出せなくなった梓に対する(自分の過去の言葉に押し潰されそうなことへの)『無理に意味を見出そうと苦しまなくていい』ということかもしれない。
後付けにしかならなくても、今は意味なんて分からなくても、いつか意味が生まれる日が来るかもしれない。無理に抱え込んで一人にならなくても自分を許せるようになりたい。
そして、『一人でも大丈夫だね』と信じてもらいたい。
ひまりはずっと亜珠沙の言葉を抱えていた。『鏡を見ろ。』ひまりは亜珠沙とちゃんと仲直りしたかったし、卒業式にも出てもらいたかった。それができなかったことをずっと悔いているから、亜珠沙に似ているりんちゃんのために必死になった。その事実が亜珠沙を救う(と言うのは大仰かもしれないけど)ことを亜珠沙以外知らない。そこに意味が生まれるのは、亜珠沙が意味を生んだからだ。
ひまりは亜珠沙のストイックさに並びたかった。同じ夢を見ていた。そこで主演を譲るような人間なら主演には選ばれなかったし亜珠沙も気に入らなかったはずだ。